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三脚の知識(その4)究極の「旅行用三脚」を求めて

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スリック創業者は今、80歳を超えていながら、まだまだ三脚に対する興味は薄れていない人物です。あるとき創業者に「スリックの最高傑作は?」と尋ねると「500Gだ」という答えでした。

スリック500G(デビュー当時は500g)は、当時のスリックの技術を全て集めて開発された製品で、昭和51年に発売を開始しました。スリックは戦後、「進駐軍が持ち込んだ三脚を見て一念発起した創業者が、23歳(昭和23年)の時にアルミ製の三脚を手作りした」ところから起きた会社で、株式会社組織となった1956年(昭和31年)を創業年としていますが、もっと歴史が古い会社です。スリックはスタート時からプロ用、報道用を目指したため「記念写真用、アマチュア用」といった製品がほとんどありませんでした。そんな中で「折りたたみ傘と変わらないサイズ、重量」をターゲットとして開発したのがスリック500Gだったのです。

当時スリックで最も軽い「グッドマンハンディー」が1,100gでしたから、大幅な軽量化です。軽量化のために2つの試みをし、成功しました。

一つは「電接管」という、薄いアルミ板を連続溶接して作り上げるパイプです。当時一般的なアルミ三脚のパイプは「押し出し管」といい、型に溶けたアルミを流し込んで押し出して製造するモノで、パイプの肉厚が1.2mmくらいでした。それに対し500Gに使われた電接管は0.6mm厚。パイプの肉厚だけでも50%の軽量化となるわけです。

もう一つの試みが「パイプ以外のパーツを全てプラスチックで作る」というものです。雲台、本体(脚3本を接合する部分)はもちろんのこと、0.6mm厚と薄くてネジ山を切ることができないパイプに、プラスチック製の「ネジリング」と「ナット」をかぶせることで、脚ロックを作り出しました。いまでは、5,000円以下で売られる三脚のほとんどに、プラスチックの雲台や本体、脚ロックが使われていることを考えれば、スリックの先進性がわかります。

さらに価格のチャレンジもありました。当時のダボ式8段三脚の販売価格よりも安い3,800円の値付けをしたのです。

画期的な製品で値段が安く、しかもプロ用で実績がある「スリック」の製品、ということでものすごい勢いで売れたようです。数年で「販売累計100万本」を達成しました。この成功を受けて、さらに海外にセールス。海外でも成功したため、スリックの本社工場(埼玉県日高市)に24時間稼働の全自動式三脚組み立て機を作って導入したとのことでした。

 

水に浮く?三脚。

 

スリック500Gの軽さをアピールするために、様々な広告が考えられました。

発売してすぐには「ピエロが風船を持ったイラストで軽さをアピールする」チラシを作成。

初期の500gはプラスチック部品を軽そうに見せるため、アイボリーの色調に着色していました。

ところがしばらくしてユーザーの反響から「プラスチック部品は全て黒」に改められました。そこでポスターを作成。500Gの軽さを表すためにプールに泳いでいる女性の傍らで500Gが水に浮いているイメージ写真を撮影しています。と同時に強さを表すため、体操選手が500Gの上で倒立している姿も当時のポスターに使われています。

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軽さと実用性を備えた500Gはそれまでの「スリックはプロ用」という概念を覆し、より広いユーザーに愛される製品となりました。

500Gシリーズは姉妹モデルとしてより背が高く、ステー付(3本の脚を連結する構造、軽くて背が高いので、これにより脚同士を連動させて閉じにくくする)で安定性を増した「800G」、より持ち運びがコンパクトで、伸ばせば背が高くなる2段エレベーター採用の「450G」のバリエーションモデルとともに長期に渡って売り続けています。

数年後、パイプが空回りしないように溝入丸パイプを採用した「500GII」にモデルチェンジ。さらにオリジナルが2ウェイ雲台だったのに対し、カメラ台部分を前面に押し出すと縦位置にセットできるように90度動く簡易3ウェイ雲台式の「500GIII」に進化。

日本製であった500Gシリーズは、1980年代後半に設立されたスリックの海外工場「スリックタイランド」でノックダウン生産を開始しました。ノックダウン生産というのは、部材は全て日本で調達し、現地の工場で組み立てのみを行う、というものです。

1990年代半ばには、タイでパイプ等の部品を調達して製造を開始した、オリジナルの500Gに近い性能のモデル「コンパクト」が登場。このモデルは「500GIV」に当たるわけですが、4という数字は使われませんでした。

2000年代に入り、500Gと同等の中国製小型三脚がほとんど、脚伸縮のロックに「レバー」を採用しているのをうけて、スリックもレバーロック式の「500GV」(Vはローマ数字の「5」)に進化。さらに脚パイプの色をチタンカラーにした「500GVI」にモデルチェンジしました。

現在販売中の500Gシリーズは500G-7500GIIIから採用の「簡易3ウェイ」は、上下・左右が任意に設定できるのに対し、縦位置と横位置の切替が2段階というものでした。この設計をGVI型まで継承し続けたため、よりしっかり固定できて任意の角度で止められる3ウェイ雲台に変更したものを「G-7」としました。現在、500G-7800G-7450G-73種のバリエーションで発売中です。また、低価格機として第4世代の「コンパクト」を継続していましたが、2009年にパイプ色を黒に、脚ロックをレバー式とした「コンパクトIIに進化。旅行用途の小型軽量三脚としてお勧めです。

※この記事は「全連通報」(全日本写真材料商組合連合会の機関誌)に連載している「売り上げ増につながる!写真用品の知識」を一般向けに加筆・修正したものです。

※内容の引用等、ご活用ください。